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No.2 [兆候]

2009.04.16  *Edit 

兆候




「ねえあなた達 メロを見なかった?」
ハウスの世話係のシスターが子供達に訪ねている
「知りません」
「そういえば朝食の時もいなかったね」
「うん いなかった」

パタパタと忙しなく動く足音が廊下に響く
その音はニアのいる遊戯室の前で止まる

「ニア あなたメロを知らない?」
南向きの遊戯室 
そろそろ太陽が真上に登ってくる時間に 日光を避けるかのように窓辺から少し離れた場所にニアはいる
シスターの呼びかけに はめ込もうとしていたピースを持つ手を止めた
「…いえ 知りません」
「朝は部屋にはいたのかしら?」
「…………」
 
________________________ニアはその日の朝の記憶を辿る
 
起床時間にはまだ早い6時前 

未だ夜も明けきっていない冷たい空気がしっとりと重みをもって大気を覆う
湿った粒子を無数に含んだそれは帯を成して肌に絡み 温もった体温を奪っていく

モノクロの部屋の片隅でなにやらごそごそと音が聞こえ その微かな音でニアが目を覚ました
メロがクローゼットの中で何やら探し物をしているようだ
ニアは薄目を開けてメロに気付かれない様 そっとその様子を見守っていた 

メロが取り出したそれは革紐のようなものでつり下げられているガラスのペンダントだ

メロはそれを目線に掲げてくるくる回る様を暫くの間眺めていた
意を決したかのように無造作に上着のポケットに押し込み静かに部屋を出て行った

トクンと心臓が鳴る 

ニアは急いで飛び起きてドアへ向かったが 自分のするべきことが何なのか分からずにその場に佇んでしまった
腕はドアノブに掛かったまま………


そんな朝の情景をぼんやりと思い出している
また心臓がトクンと鳴る…
問いかけに応えないニアに小さく微笑み シスターはその場を離れた
_____________




陽は既に傾きかけ 燦々と浴びた陽の光で温もっていたフローリングも今は只の冷たい床に戻りつつある
 
ハウスの裏手の教会が5時の鐘を薄紫の空に鳴り響かせる
吹き抜けの室内で聞くその鐘の音は いつにも増して反響し、直に耳を劈く
ニアは教会の古びた机に頬を横たえ所在なげに視線を宙に這わせた
礼拝堂に漂う大気は宇宙のそれと似ているのかもしれない とニアは思う

ステンドグラスの七色は 真直ぐに地上に降りてきて キラキラと輝く光の粒が ニアの周りに漂う
ほんの少しの眩しさに思わずニアは瞳を閉じるが それでも瞼の裏に焼き付いた色は拭えない

暫く目を閉じていると 瞼が艶やかな金色を捕らえた様な気がして再び目を開くと
絹の様に細い光のラインと合い重なって それはユラユラと近づいて来る

トクン… トクン………

「……………メロ」
机に頬を乗せたままその色の方を見やる
メロはニアのすぐ横の椅子に腰掛け すぐさま上体をニアの方に向け顔の前スレスレに俯伏す
「どこに行っていたんですか…」
「心配した?」
「……」
「珍しいな ここに居るなんて…」
「…ここで待っていれば遭えると思いました……」
「…ふ ん…」
メロは片手をニアの耳のすぐ横に延ばし そこにある柔らかな銀色の髪を指先で弄ぶと
ニアは再び静かに瞼を閉じる

メロはポケットを探り 朝見ていたガラスの球体を取り出した
それを高く持ち上げると徐にステンドグラスからこぼれ落ちるの光の線の中にかざす
くるくると回る球体は差し込む光を屈折させ 辺りいっぱいにプリズムの波を造りだす
「リュースターですね」
「そう言う名前なの?さすがニア 何でも知ってるお利口ニア」
「……」
メロは上体を起こし 踊る七色の光に腕を延ばしてそれを掴む仕草をする
「誰かがこれを僕にくれたんだ」
「…誰か?」
「分からないんだ ……きれいな人だった… 女の人?…だったのかも知れない… いや…………」
何かを思い出す様にメロの視線はその光の先を見つめる
宙に掲げた腕はやがて下ろされ 球体は机の上で転がりその周りに小さな丸い陰を落とす

「昨日夢をみた 誰かがこれをくれた夢 此処へ来た日だったような… なにか思い出せるような気がしたから…」
机に転がる球体を指で転がしながら話す
「確かめたくなって………」
「……一日中徨ってたんですか…?」
「…… でも」
「………」
「何も思い出せなかった 曖昧なんだ 記憶なのか夢なのか あれは何処だったのか ホントにこれは貰った物なのか…」
メロは俯伏したまま顔を横に向けて球体を見つめている
やがてその瞳は涙で溢れ 瞬きと同時に一気に伝って流れ落ちた
「メロ……」
ニアは両手で優しくメロを包み込んだ
「メロ……何故泣くんですか……」
メロの涙の痕跡をひとさし指で静かになぞる
瞼 頬 …
そして光に溶けそうなその絹の髪に小さくキスを落とす
メロは上体を少し起こし 自分を包み込んでいるニアの細い手首を掴み静かに下ろす

「キスの意味を知ってる………?」

トクン…

「……わかりません…」

握った手首はそのままで 空いた片方の手でニアの顔を優しく引き寄せそして額にキスをする

チュ…
「これは友情…」

トクン… トクン…

頬にキス チュ… 「これは厚意…」
そして瞼 チュ… 「これは憧憬…」

トクン… トクン… トクン……

握ったままだったニアの手の その甲を自分の頬に押しあて そしてそこにキスをする
チュ…「尊敬…  そして…」
手のひらにキス 「…懇願」  チュ…
手のひらに置いた唇はゆっくりと這い 手首に移動する
メロの唇はニアの手首の上を遊ぶ
軽く歯を立てるとニアはそれに反応した
メロは舌の先を少しだけ覗かせて ニアの手首に浮いた細い血管の上を緩やかにたどる
「フ…ァ……」
ゾクリと鳥肌が立つ感覚に小さな声を漏らし 一瞬その手を自分の方に引き寄せたがすぐに引き戻された
「メ…ロ くすぐったいです…」
メロの猫の様な緑の球体は ニアを捉えて離さない
「欲望……」
もう一度手首にキスをする

トクン トクン トクン……

「…これは 欲望」
そう言ってメロはいきなりニアの唇に自分の唇を押しあてる
………ッ……
掴んでいた手首を離し 掌を広げてニアのうなじと耳の間にあてがうその指先は
じれったい程に髪を鋤くように弄んでいる
 …フ ァ…  ……
湿り気を帯びた艶やかな声はこの小さな宇宙に木霊する
「…ハァ ア…」
ニアの唇から漏れる吐息に メロは一層気持ちが昂る
うなじの後ろから少し力を加えニアの顔を自分の方に押し付ける様にしてさらに唇を強く吸う
「…ン… ァ …」
押さえ込んでいた手を緩め少し角度をかえて唇の隙間をつくる
メロは舌先をニアの唇の裏にあてがい そこに円を描く様にゆるやかに動かす
吐息はだんだんと艶を帯びた喘ぎに変わっていく

ハァ  ァ… …
歯の上で舌を動かし少し覗かせたその間に舌を差し入れ吸い上げるように奥を捉える
「んっ… はぁっ」 ニアは呼吸を求めてメロの唇から逃げる

「……ァ……意味 は……」

冷めやらぬ体温にニアの頬は上気してほんのり染まっている
「ハ ァ…唇の キスの意味は……」
ニアの言葉にメロは応えない

メロはニアの喘ぐその唇の輪郭を指でなぞり 顎を持ち上げ啄む様にして再び唇を合わせる

チュ… ハァ…… 
ン…ンァ……チュ…
チュッ クチュ……  ン…ファ  ア………………

ニアの耳に唇を移動させ その小さな形に舌を這わせていく
「は…ぁぁ 」
メロの背中にゆっくりと手のひらを合わせる二本の細い腕
メロはゆっくりニアから唇を離し その細い体躯を力一杯抱き寄せる
首筋に流れるニアの鼓動はメロの耳元をくすぐる

トクトクトクトクトクトクトクトクトクトクトクトクトクトク………


熱の鎮静を求めてニアの薄い肩に頭をもたげてみせるが 逸る気持ちの置き場がわからない
メロはたまらなくなりニアの喉元に舌を這わせた


二人の吐息はやがてくる夜の帷の中に消える


ひっそりと溶け合うように…





next [把捉]


Sequence [把捉]はR描写があります。
大丈夫な方はどうぞ


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