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第九章

2009.05.08  *Edit 

「……もうすぐ朝になります メロ。」
あれから何度抱き合ったのか 空はすでに星の名残が弱い光を空に映しているだけだ。
ベッドから見上げる窓の向こう パールゴールドのオーガンジーの帯がまだ少し暗い空の端から徐々に流れるように色を添えている。
「明日見ればいい。」
「そうですね……」
頭上の先からを仰ぐようにして反ったその頼りないネイトの喉元にキスをおとしてくる。
「メロ…部屋へ戻らないと見つかってしまいます……」
「ふふん まだみんな眠っている。見張り役もとっくに転寝をしている頃だ。」
足を絡めて上から組み伏せてくるミハエルを拒むようにネイトはゆっくりと身体を反転させる。
「まだ欲しい」
 顎を掴んで自分に向けさせたネイトのその唇にキスをする。
ミハエルの言葉に反応してすぐにまた形が変わりそうになるのを平常心で抑えて ミハエルの唇から離れてまた横を向いた。
負けじと耳の後ろに唇を這わせ熱い息を吹き掛けるミハエル。
「はぁ …メロ もうだめです 戻って下さい」
クククと小さく笑って困っているネイトを見て楽しんでいるミハエルの声を背中で聞きながら、何故か無償に可笑しくなってネイトも一緒に笑い出した。
「たいむましんというものだけど あれはどうやって使うんだ?」
体温を感じずにはいられないという様子のミハエルは、ネイトのその薄い肩を抱き上げ
身体のあちこちを啄むようにキスをしながら話しかける。
「ん… くすぐったいですよ。 説明いたしますので…離してください……」
ニヤリと笑いながら一旦身体を離し、残念な様子でネイトの頬に小さくキスをして自らの上半身を起こす。
ネイトは傍らにあったブランケットを肩から羽織り 机の引き出しからなにやら持ってきてミハエルの前に差し出した。
それはキラキラと光るガラスの球だ。
手の中にすっぽりと収まる程の大きさで、球全体に沢山の細かいカットが一寸の狂いも無い程の精密さで施されている。
「なんて美しいんだ…」
球体は窓から差し込む朝焼けの光を屈折させて部屋にいくつもの七色の光のラインを造りだした。
ミハエルはその美しさに暫し見とれたあと、ふと現実に引き戻されたような面もちでネイトに視線を移す。
「これは、何というものだ?」
「リュースターと名付けました。 光を屈折するように移動の際に空間をねじ曲げるエネルギーを作りだします。」
「空間をねじ曲げる?ニアの話はさっぱり分からないが、これをどうするんだ?」
ネイトは天球儀をベッドの上に持って来てその横に腰掛け、天球儀の丸い形を作っている表面の留め金を外す 。
球が二つに分かれ丁度真ん中にそのリュースターが収まるように丸い溝が掘られていた。
そこにリュースターを収めて再び留め金を合わせ元の形に戻してから、クローゼットの中に天球儀を設置している。
ミハエルはその様子をベッドに腰掛けて眺めていたが、どうにも気になりだしてガウンを羽織りクローゼットの方へ移動した。
中を覗き込む、と、その中はすでにクローゼットの役割を果たしておらず、なにやら訳の分からないスイッチのようなものが整然と並んでいた。
「これは………」
「タイムマシンのスイッチです。先程のように中にリュースターを収めた天球儀をここに設置します。ちょっと動かしてみましょうか、いいですか?」
「動くのか?!」
ネイトはミハエルの言葉に答える代わりに少し微笑み、丸い取手のレバーを下に押し下げると整然と並んでいたボタンが色とりどりな光を放ちながら点滅し、設置された天球儀がゆっくりと回りだした。
続いてボタンの横に設置されているつまみを回し、数字の並んでいるボタンを操作する。

       38 05 am  15 09 2002

「今日は1502年の9月の15日ですね。いまから丁度500年後の今日9月15日の朝の5時38分に合わせました 
このボタンを押せばスタートです。先程のリュースターが熱エネルギーとなって時間を屈折して500年後の……
2002年の世界に行けます…いえ…行ける筈と言い直しましょう。」
「500年後…。このクローゼットが?」 
「いえ、マシンごと移動する訳ではありませんのでどの辺りの場所に送られるか見当がつきませんが多分同じ場所に送られる筈です。」
ネイトはまるで子供のおもちゃを弄っているかの様に大した事ではないと言った調子で淡々と言葉を放つ。
「500年先など考えた事も無い…。500年先、年はとってるのか?…あ、いや、500歳も生きてる筈はないな。」
ミハエルは自分の発言が馬鹿馬鹿しいことだとすぐに否定した。
「今と同じ容姿なのか?」
「同じであることが理想です。いえ、そうでなければタイムマシンの意味をなしません。 変わらずに送られるということがタイムマシンとしての条件なんです。」
「500年先か…此処は一体どうなっているんだろうな。」
「そうですね。ただ自然界においてはまったく予期せぬ事態が起こりうる可能性は多いにあります。 
500年先に辿り着く前に何かの支障をきたして時間や日付が前後するかもしれません。
2002年の筈が1995年だったり、 計器の故障かもしくはその時代の地形の変化や大気の微妙なエネルギーなど 様々な事態が考えられます。
それによってもしかして年をとっているか、あるいは幼くなっているか……
まったく予想もつきませんが、いずれにせよ細胞を司る核は同じでないと意味がないということです。」
「記憶はどうなんだ?自分がたいむましんで来たという事は…」
「記憶としてはその本人の意識がどのようなパズルを組み立てているかによります。 
全ての条件がそろっていても曖昧な記憶だけが残っているとか、痕跡はあるが思い出せないなど、様々な障害をきたすかもしれません。
しかし500年先といっても本人にとってはものの数秒~数分の出来事である筈ですので、記憶の途切れは時空上でのなんらかのトラブルと考えたいです。」
「なるほど どんな条件であれ存在は同じである事は確実なんだな。」
「ですがそれは誰も確認する事が出来ません。 
タイムマシンはあっという間にその時代に行けると論していても戻ってこれないのであれば無意味です。」
「無意味と言うのはどういう事だ?」 
「誰も証明出来ないと言う事ですよ。実際私が500年後の世界へ行ったとしても、それを証明できなければ意味をなさないでしょう?」
「ん~~」
「曖昧な記憶とか断片的に覚えているなどというのであれば宇宙規模の時間の中での単なる生まれ変わりかも知れないということになります。 
残念ながら、まあそれは500年も先の話を取り上げているのでまったく現実的ではありませんが、身近な所で一年後とか5年後レベルであれば確信出来る部分は多々あると思いますよ。」
「そうだ、なにも500年も先にいく必要はないんだ。」
ネイトはすぐにミハエルの方を向き直って一言つけたした。
「現実的な時間の場合ですが、ここで気をつけないといけないのは同じ時間に同じ人間が二人存在する事があってはいけないという事です。 
もし間違ってそのような所に行ってしまったら…」
「しまったら?」
「どちらかが消えてしまいます。」
「消える?」
「はい。時間の歪みに潰されて消滅するといっても過言ではありません。」
「消滅…?」
ミハエルは頭を抱えながらも丁寧にネイトの話に耳を傾ける。
「ですから確実に存在していない時間に飛ばなくては行けません。
もし過去に行った場合はこれから生まれる自分とダブらないか十分気をつけないといけませんね。」
「戻ってくればいいじゃないか?」
痛い所を突かれたという面持ちで、溜息をついてタイムマシンの稼動レバーを戻す。
途端に先程まで眩しい程に点滅していたボタンは、ふっ…といきなり色を落とした。
「問題はそこです。戻れません…と言うか…行った先の世界に戻る為の装置がなければ無理なのです。
私が作ったこれは乗り物として移動するものではありませんから、今度は戻る為の道具が必要になるのです。」
「そうか… まあ、しかし500年後だったらあるかもしれないな。」
「そうですね。期待しましょう。それと!」
もう一つ言い忘れたという様な仕草で人差し指をたてる。
「このリュースターが屈折する原理を考えて、稼動するのは日の光があたる時間帯でないといけません。それは送る場合のみですが、というよりも戻ることに関しての条件は今の所考えつきません。」
ネイトのロジックに感心して、ミハエルはその顔をマジマジと見つめる。
「ニア、お前は本当に素晴らしい。僕の生涯の自慢だ。」
そういってネイトのブランケットをハラリと床に落とし自らのガウンの合わせを開いて背後から覆って優しく抱きしめる。
「また欲しくなった」
髪にキスをされ、耳たぶを軽く噛まれたネイトは再び身体が熱くなるのを感じた。
「駄目です メロ 時間です」
ネイトの言葉など耳に入っていないとばかりにいつまでもネイトを離さない。 




注【リュースター】 反転で
精密にカットされたガラスの玉です。
もともとはシャンデリアの部品としてつくられているようで、カットが多ければ多い程七色が綺麗なのだそうです。
丸や星形、三角形、雫など形も様々で、カットガラスに光が反射して辺りに虹色の光を生み出すので、紐をつけて窓辺に下げておくと部屋の壁にゆらゆらと七色がゆれてとても幻想的で美しいです。
リュースターというのは多分商品名でしょうか、他に呼び方があるのかわかりませんが、購入したお店でそのような名前で置いてありましたのでお話につかいました。




続く…





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