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第三章

2009.04.26  *Edit 

「さあ着きました ここです 私がいつも散策している場所です」
高い木に覆われた森の中 
その場所だけがそびえ立つ天辺の枝の先が左右に分かれ そこから小さく空を見せている
暖かな日溜まりの欠片が天から降り注ぎ そこに光の円柱を創りまあるくゆらゆらと揺れている

「ニアはいつもここで昼寝をしているのか?」
ミハエルは先程のネイトの科白を思い出し 可笑しくて止まない様子で聞き返す
「いつもではありません そんなに意地悪を言わないで下さいメロ」
「ニアは顔に似合わず頭が良くて可愛げが無い どうしてそんなに勉強ばかりしているんだ?」
「言ってる事がわかりません 顔の造りと勉学はまったく比例しません 関連性も生産性も無い愚問ですね」
「ほらそう言うところが可愛くないと言ってるんだ もっと人生を楽しめよ 僕はお前が羨ましいよ」
適当な太さの木を探してウエディを綱いているネイトを見つめながらミハエルは言う
「私は十分楽しんでますよ 城に住まわせてもらっておりますし素晴らしい書物も豊富にあります
一日中好きな本も読めます 暇な時はこうやってここで……」
昼寝 と言いそうになりネイトは言葉を切る
「やっぱりしているんじゃないか」
笑いながらのミハエルの言葉にネイトも思わず笑う
「それにあなたのような素晴らしい王子に御支え出来たことはこの上ない私の人生の宝です」
「お世辞を言うなよ 僕は何もしてやれないぞ」
「違います そういう見返りを言っているのではありません」
ネイトは光の円柱の中程までやってきてそこにしゃがみ 小さく咲いている草花を見やる

「わかってるさ そんな事は僕が一番分かっている 長い付き合いだ 
もうすぐ僕は19になる 時が経つのは早いな」
「あなたが隣国の王女を娶られると聞きました もうそのようなご年齢になられたのですね 本当に早いです」
「知っていたのか?」
ミハエルは太い大木の前に腰を下ろそうとしてしているのをネイトは手で待ったをかけて
持っていたハンカチをミハエルに差し出す
「いらない 女みたいに敷く必要はない 気を使うな」
ハンカチを断られたが特に気にもせずに再び話を続ける
「あなたがこの城を出て行くとなれば私の勤めも終わりです」
「可笑しいだろ?一国の王子が婿に行くなんて前代未聞だ」
足元に生えている雑草を指で遊びながら話す
「まあそもそもこの国を継ぐのは僕ではない事は知っていたから今更どうでもいいがな」

ライト王夫妻に今年新たに男の子が誕生した
そもそも前王の息子であるミハエルはその時点で今の国王には必要の無い王子となった
厄介払いの為に隣国であるヤガミ国のソーイチロ王の娘サーユ王女との結婚を無理矢理約束させられたというわけだ

「僕の父が何故殺されたのか分からないし誰もそれについては触れない もともと父上と叔父は仲が良くなかったらしい
 王の座を狙って私欲の為に叔父が殺したのかもしれないというのを聞いた事があるが本当かもしれないな」
ミハエルは遊ばせていたその手を止め ネイトを見やる
「もしそれが本当でも僕にはどうする事も出来ない 
情けない事だがこの森への出入りも魔物のせいにして禁止していたが……
本当は僕に何か都合の悪い事でも思い出させないようにという事だろう」

草花から目線を上げてゆるりとミハエルを振り返る
「あなたは素晴らしいお方ですよ」 ネイトはミハエルの顔を真直ぐに見つめる
「隣国でゆくゆくは立派な王になられることと私は確信しております 
必要とあればもし私を呼んで下さるのならこの上なき光栄です」
ネイトは恭しくお辞儀をする
「よせニア 僕は結婚する気など全くないし大体サーユ王女とやらに会った事も無い 
そんな女と結婚が出来る訳が無いだろう 愛してないのだから嫌に決まってる」 不貞腐れた調子で言葉を放つ
「王子は誰か他に愛している方がいらっしゃるのですか?」 ネイトは何気なく訪ねてみる
「愛してる女?う~ん考えた事も無いな」 一旦言葉を切ってネイトを見る
「女なんて面倒くさい生き物だ 僕は一生独身でも構わないとさえ思っているんだが……
こういう考えをお前はどう思う?僕はおかしいか?」
「人それぞれですから一概に言えません 王子は王子の考えで良いのではないでしょうか
しかし決まった結婚を今更白紙にするというのはどうかと思いますが」

ネイトは実際のところどのように切り返せばいいのか分からなかった
そもそもミハエルを喜ばす答え方をするのがこの質問の真意ではないからだ

「勝手に決められた結婚だ ところでニアはどうなんだ?好きな女はいるのか?」
答えに少し戸惑った 「わたしはおりません」
「女を抱いた事はあるか?」
「え?」
いきなりの質問にネイトは少し顔を火照らす
「答えなくてはいけませんか?」
「なに赤くなっているんだ?まあ別に答えなくてもいいよ 聞いてみたかっただけだ」
そう言ってミハエルは足元に埋まっている石を掘り出し所在なげに放る

「さあそろそろ勉強を始めましょうか 森は暗くなるのが早いのです 
ぐずぐずしていたらそれこそ道に迷って二度と帰れなくなるかもしれませんよ」
革袋から持って来た手帳を取り出しインクをつけた鉄筆でなにやら書きこんでいる
「その手帳には一体何が書かれているんだ?いつも肌身離さず持ち歩いているがそんなに大事なものなのか?」
ミハエルは熱心に書き込んでいるネイトの横顔を見つめながら話しかける
「はい 観察の様子を書き込んでます 花の生長や状態等ここへ来る度に記録しています
あとは書物を拝見した際に記述したり 実験の結果などですが」
「実験?なんの実験だ?」
「今は言えません まだ途中の段階ですから もう少し確信に近づいたらお教えいたします
その時はお声をかけます でも他の人には内緒ですよ」
「内緒というのはそそられる科白だ なんだろう 凄く楽しみにしてるからぜったい教えてくれよ」
「お約束しますよ」
そう言ってネイトは目の前の木の上を仰ぐように高い位置に絡まっているツルに手を延ばし丁寧に観察している

頭上から光のカーテンが下ろされ 細かな粒が渦を巻くようにしてネイトを包み込む
天を仰いで手を伸ばしているネイトの姿に ミハエルは今にもネイトが空へ昇って行ってしまう様な錯覚を覚える

一瞬眩しさに目をつむったかと思うと 急いでネイトの側に駆け寄る








続く…




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