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第一章

2009.04.24  *Edit 

「王子 どうしたのですか? なんだか上の空ですね」
物理学を担当している家庭教師のネイトは ボードに方程式を書いていた手をひとまず止めてそれとなく声をかける
ミハエルはやる気のなさそうな様子で窓枠にもたれかかりながら ぼんやりと双眼鏡で遠くを眺めている
「あああ~~~」 大きく欠伸をして再び双眼鏡を覗き込む
「ネイト お前 あの森に行った事はあるか?」
「森?」

ミハエルの言う森というのは 彼がまだ幼子だった頃に彼の両親が何者かによって殺された場所である
殺された両親の傍らでまだ2歳だった彼と 一つ下の妹は何も知らずに眠っていたという
叔父であるライトとその妻ミーサ夫婦に引き取られ もともとは彼の城であったこの場所で叔父のライトは今や国の王として君臨している
 
「そうだ あの森だ 見てみろ なんだか気味が悪い」
そう言って双眼鏡をネイトに渡しながら 興味ありげに薄ら笑いをする
ネイトは双眼鏡を受け取ったが覗きはせずにそのまま手に持って彼の質問に答える
「はい よく行きますよ 草花や虫の観察で書き物をしますゆえ 資料集めです」
「行った事があるのか?!」 ミハエルは驚いたようにネイトに向き直る
「ええ 王子の勉強のない日はよく行きますが それが何か?」
ミハエルの猫の様な緑色の透明な球体は真直ぐネイトに向けられる
「僕は母上に行くなと止められていた 小さい頃からな」
ミハエルの声のトーンはだんだんと上がっていく
「森には邪悪な霊が住み付いているのだそうだ ふん 下らないな」
ニヤリと笑ってネイトを見る
「森が邪悪なものというのは迷信です 王妃は心配していらっしゃるのでしょう あなたに怖い思いをさせまいという御配慮です」
ミハエルはベールに包まれた自分の生い立ちを思い出そうとするかのように遠くに視線を這わせた
「王子 さあ勉強の続きをしませんと今日が終わってしまいます」 ネイトは再び黒板の方へ足を向けた
「行ってみたい」 「はい?」ミハエルの声に振り向く
「森に行ってみたい 本当はずっと気になっていた!」
「王子」
「ネイト 僕を森へ案内しろ」
ミハエルは瞳をキラキラさせながらネイトに懇願するように歩み寄る
「それはいけません なんと言うおつもりですか?森には邪悪なものなどいないと私が言ったから大丈夫とでも説明するのですか?」
ネイトは困った様子で王子の意見に反対した
「ご心配を棚に上げて 私が王妃を嘘つき呼ばわりしたと同然ではないですか」
「正直に言う筈がないだろう 裏山に行くとでも言えば良い 今日は天気がいいから課外授業とやらを提案すればいいじゃないか 決まりだ」
「まったくあなたという人はすぐに行動に移さないと気が済まないのですね もう少し思慮深くおなりになってもよい年齢ですのに」
ミハエルの好奇心には慣れているが ここは一応家庭教師であるがゆえ 注意のひとつでも言っておかねばならないネイトである
「お前はいつからそんなに小姑のように口うるさくなったんだ? 小さい頃は一緒に楽しく遊んでくれてたじゃないか 固い事を言うな」
ミハエルは綺麗に整った白い歯を見せながら満面な笑顔をネイトに向ける
ネイトはこのミハエルの笑顔にはいつも負かされる 無邪気で魅力的な笑顔だ
「それから」
「まだなにかあるのですか?」ネイトは少々困った様子で聞き返す
「二人の時には王子と呼ぶのはやめろと何度も言ってるだろ」
「今はその話では……」
「とりあえず母上にお前の承諾をもらってくるから帰るまでに馬を用意しておけ」 そう言って急いで部屋を出て行く
『小さい頃はよく王子と一日中遊んだものだ』ミハエルの一言で懐かしい情景を思い出す

ネイトの父親のアンソニーは同じくこの城で家庭教師をしていた
家庭教師と言ってもいまのネイトのように勉強を教えるというのではなく ミハエルの父 前王ローライトの心服の友であった
この城で博学者としてローライト王の良き相談者になっていたが 王が殺され王妃も殺され今のライト王に変わって程なく城を出た
ミハエルが7歳になった時
アンソニーのもとに我息子であるで5歳のネイトをミハエルの遊び相手として城に連れてくるようにとの命令が下った
最初は只の遊び相手として呼ばれていたネイトだが
稀に類を見ないネイトの知識の高さを買われ のちにミハエルの家庭教師を努めるようになった
その日からネイトは殆ど城で寝泊まりをするようになり 年に2度与えられる十日程の休みの間に帰省するくらいだった

「さて 私も出かける用意でもしましょうか」
そう言って酸化を防ぐ為に牛の角で作られたインク角の中に溢れないよう丁寧にインクを流し入れる
コンパス 事典 羊皮紙 鉄筆 手帳など
森に行く時にはいつも持ち歩いているそれらの物を革袋に詰め込み馬の用意の為に
納屋へ急いだ








続く…





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