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ひとつ前の未来へ

2009.04.14  *Edit 

天気が悪い
風が強い
時折揺れる天井の電気
バラバラゴウゴウと雨風の音に混じり 窓の近くの樫の木の枝がガラス窓に叩き付けられて今にも折れそうだ


「うるさいんだよも~っ」
「一日中外へ出れなかったメロは不機嫌なセリフを吐きながらゴロゴロとベッドに寝そべって本を読んでいる
ニアはベッドの端にちょこんと腰を下ろし 大層分厚い本を落とさないように膝で支えて読破している様子だ

「さ~てと」
メロの声にピクッとしてニアは読んでいた本を床に落とした   ドサッ
「………」
音に振り向きはしたが何も言わずに部屋を出て行こうとするメロを目で追いニアは急いでベッドから腰を上げた
「メロ わたしも」
「……トイレ 行くだけなんだけど……」
「一緒に行きます」
「………」
廊下の先にあるトイレに着くまでの間 メロの後ろからオカルトチックなニアの足音がヒタヒタと響く
用を済ませてるあいだもニアはひっきりなしにメロに声をかける
「メロ」
「なに?」
「………」
「なんだよ」
「いえ なんでもありません」
「じゃあ呼ぶなよ」

トイレの横に設置されているバスルームは今の時間は生憎誰も使ってはいない
「ニア 風呂先に入れよあとが支えるからさ 僕が先でもどっちでもいいんだけど…」
「あ」
「あーっ!一緒になんて絶対にいやだからな!!」
「一緒には入りません」
「…には?」
「だから私が使ってる間 ドアの所にいてください お願いしますメロ」
「んあああ~」


     トイレに行くだけなのに カップを食堂に戻しにいくだけなのに 
     図書室に本を借りに行くだけなのに
     いちいち僕についてくる
     おまけに自分の用事の時は僕について来て欲しいと頼む

     ニアは夜一人になるのを嫌がる時がある
     特に今日みたいに天気の最悪な日
     風が強くて雨が窓をたたき壊すくらいの勢いで吹き付けて 
     なんかお化けでもでそうな夜

「何そんなに怖がってるんだよ アダムスファミリーでもやって来ると思ってるのか?」
「メロは怖くないんですか?」
「怖かないよ あんなのただのお笑いホラー映画じゃん」
「いえ アダムスファミリーじゃなくて」
「じゃあ なんでそんなに人のあとばっかりついてくるんだ? 幼稚園生かよ」
いい加減鬱陶しいんだけど………何ども心の中で繰り返すセリフ
「はぁ~あ……」
ウンザリした調子で溜息をつく


天気の良い日 メロは休み時間中ずっと外に出てサッカーをして遊んでいる
流石にニアはいない
まだ明るい夕方 ニアが図書室窓辺付近で本を読んでいるのをメロは裏庭から見かけた
そもそもこんな時まで一緒にいられたってこっちが困ると思いながらもニアがいつもついて来る辺りの距離に視線を落とす

もうすぐ夕食の時間
空を見上げるとオレンジのオーガンジーがまだ染まりきらない水色と混じって
きれいなグラデーションを描いている
「今日の夜は大丈夫だな」
そう心の中で思いながらもう一度図書室のニアに視線を戻す

「メロ!!ボール!! そっち行った メロッ!!あああああ」
「!!えっっっ」
声の方に振り向いた時はもう遅い
ボールが顔面を直撃し 身体のバランスを崩して後ろに倒れた
脳しんとうをおこしたメロはそのまま医務室に運ばれた
          ・
          ・
          ・

さやさやと風が微かに頬を撫でていくのが心地よい

「メロがボールを受け損なうなんて珍しいわね」
程なくして目が覚めたメロに 医務室の先生は額のタオルを取りかえながら笑う
「うん ちょっとよそ見してた」
「大丈夫?鼻血は止まったようだけどもう少し休んでいる?」
「いい お腹すいたからもう行くよ ありがとう」
ベッドから起き上がったメロは先生の机の上に見覚えのあるおもちゃを見つけた

「そのロボット ニアの?」
「そうよ 前は夜中にここへ来る事がよくあったの 最近は殆ど来なくなったわね」
先生は僕の鼻血のティッシュをゴミ袋にまとめている
「最初凄い勢いで泣きそうな顔してここへ飛び込んで来た時は驚いたわ」
「ニアが走るなんて変なの はは」
メロは笑ったが ニアに似つかわしくない行為に本心から笑えないでいる

そういえば夜中に風が揺らす窓枠のガタガタする音がうるさくてふと目が覚める時があった
暗い部屋の中 目を凝らして見ると決まってニアがベッドに居ない事があったなとメロは思い出した
眠気に負けてそれ以上は思考する事も無くまた元の眠りの淵に堕ちていくのだ

「ニア 何か怖がっているみたいなんだけどゴーストでも見えるのか?」
「ニアにはみえるのかも うふふ」
「ええっ?まじ?」
半分冗談で行ったつもりだがニアの様子を拝見している限りそれはあり得るかもしれないとメロは思った
「ニアは最初ハウスに来たときなぜだか凄く怯えていたの ホントに小さい時だったから慣れない環境のせいだばかりと思っていたけど」
メロは起き上がろうと立ち上がったベッドに再び腰掛けて話を聞いている
「あまり酷いので一度専門の先生に診てもらったの
 外傷性のストレスではないかって………どういう経緯でここへ来たのか詳しく知らないけどトラウマになっているようね」

ニアがいつ此処へ来たのかメロも詳しくは知らない
自分よりはもっともっと幼い頃だろうと想像する

「メロは前は同じ部屋じゃなかったから知らないでしょうけど小さい時は毎晩のようにここのベッドで寝ていたのよ
医務室は必要とあれば朝まで明かりをつけておく事もあるからそれで少しは安心だったのかもしれないわね」

ニアのベッドのランプが明るくて「眠れない」と文句をいう事がある
あの時の一言一言を思い出し自分の思いやりの無さに少し凹んでしまった

「でも昔に比べたらだいぶ落ち着いて来たわよ
大きい音と暗い場所が苦手なのは子供にはよくある事よ もう少し成長すればもっと落ち着いてくるわ」
「だから」 先生はメロの肩にやさしく手をおいて微笑む
「不安にさせない要素と理解してあげる気持ちは彼にとってはとても救いになると思うの」

「あいつさ 僕のあとばかりついて来るんだよ トイレの果てまでついて来るんだぜ」
「あら それはメロも大変ね いつもそうだと困るわね ふふふ」
「……」
ほんの少しでも自分の気持ちが言える人がいるのはそれだけで何だか救われると
メロは感じた
自分がニアの事をそうやって理解する事で少しは救いになるのだろうかと思う

「いや って言うわけじゃ…」
メロは机に置いてあるロボットを手に取る
「これ ニアに返して来る もうここには来ないんでしょ?」
「そうね ニアはメロがいるから大丈夫ね」
「……ふ ん そうでもないよ たぶん…」
そう言って再び机に戻して「夕食終わったらまた取りに来るから」
メロは医務室をダッシュで走り去り食堂へ向かった

ダイニングではすでに食事を終えた生徒が多数で 残ってるのはいつもの遅いメンバーだ
配膳台の上にはピーマンとニンジンとコーンが三色の山に形作られているトレイが置かれていて いかにもニアの食べ残しと分かる
「あいつ ニンジン残すから顔色悪いんだ」
メロは独り言のように呟き 急いで夕食をたいらげた

途中医務室に寄ってロボットを回収し ついでにマットの部屋でばか騒ぎをし 
隣室に「うるさい」と怒られ部屋に戻った

「おーい ニア ロボット持ってきたぞ」
明かりはついているがニアの姿はない
よく見るとニアのクローゼットの引き出しから下着やらパジャマやらを抜き出したままになっていた
「なんだ風呂かよ… 凄いじゃん 一人で入れるじゃん」

その時 廊下のずっと先の方で ゴトゴトと何かを叩く音が廊下に反響する

ゴンゴン ドンッ ガンッ

怖いながらも気になって音のする方へ歩いて行く
音はバスルームとトイレの方から聞こえる
廊下の途中で上級生の二人組がニヤニヤと笑いながらメロとすれ違った

バスルームの電気は消えている
「ん?」
脱衣所に入って明かりをつけてみるとシャワールームの内側からは外へ出られないように扉に支えがされてあった
だが支えはもろく 中からでもガタガタと扉を揺らせばズレる程度の仕掛けで 取手に手を掛けたとたんに難なく外れた
「ニア?いないの? おーい」
おそるおそる扉を開けて中を覗く
薄明かりの中 ニアが裸のままシャワールームの奥の方で耳をふさいでうずくまっていた
「ニアッ!!」
急いで駆け寄りニアの身体を静かに自分に向かせる
「大丈夫か?どうしたんだ?」
一瞬ビクッっと身体を強ばらせてメロを見る
瞳に涙をいっぱい溜めて大きな荒い息をしている
「ゆっくり呼吸しろ いいな ゆっくりだぞ」
メロはバスタブに掛かっていたバスタオルをニアの身体にかけてやり 呼吸に合わせるようにゆっくりとしたリズムで背中を撫でてあげた
ニアは安心したのかそっと目を閉じてメロの動作に合わせて息をする

ニアの薄く小さい背中を撫でながら なぜか自分自身に腹立たしさを感じて居ても立ってもいられない

大分呼吸が楽になったニアは一度大きく息を吐き出しそして頷く
「大 丈夫…… びっくり しただけ……」
「さっきの奴か?ニアッ」
「………」
ニアは何も言わない
「そうなんだなっ?」
ニアの様子で咄嗟にそうだろうと判断し 自分自身のイライラも吐き出すように勢いよくバスルームを飛び出す
さっきの上級生が廊下で立ち話をしていた

「このやろーっ!!」

メロは勢いをつけて走り思い切りジャンプをして自分よりも遥かに大きい身体の一人に後ろから飛びついて頭を抑えつけた
「やめろっ こいつ 離せっ!!」
背中から上半身を抑えつけられバランスを崩して前に倒れた
その拍子に先程からずっと持っていたニアのロボットが手から放り出され 壁にあたって無惨な音とともに落下した
「くっそーっ 馬鹿こいつ! はなせっよっ!!」
「はなすかっ!!」
うつ伏せでうごめく上級生は後ろ手でメロの頭を抑えつけ殴り返してきた
それでも馬乗り状態のままメロはそいつの頭を掴んではなさない
もう一人は二人の取っ組み合いをオロオロしながら眺めている
すぐに部屋からは人が出て来て二人を止めに入った
メロは背中から引きずり下ろされ 上級生はすぐさま立ち上がった
「ふざけんなお前っ」
「ふざけてんのはどっちだよ あやまれっ ニアにあやまれっ!!」
メロが大声で叫ぶ
「大げさなんだよ バカ なに熱血してんだよ 冗談だろ!あんなのすぐに外れるだろ!」
捨て台詞をはきすてその場を走って去った
野次馬もお楽しみが終わったという様子ですぐさまいなくなった

「メロ 大丈夫?口切れてるよ 絆創膏持ってくるよ」
マットは心配そうにメロの切れた唇を見て部屋に取りに行こうとする
「平気だってこれくらい 部屋帰れマット 先生来ちゃうぞ」
唇の血を服の袖で拭いながら言う
「でも……」
「いいってば 帰れ」
メロに一喝されて心配そうに後ろを振り返りながら部屋に戻る

廊下の先に無惨な姿で転がっているロボットを拾いに行く
「あ~あ」腕の取れたロボットを見つめて小さく溜息をつく

誰もいない静かな廊下のずっと先の方から 何度も耳にしている聞き慣れたあの足音が聞こえる

     ヒタヒタヒタヒタヒタ……
「メロ」
「……ごめん 壊しちゃった」
そう言って壊れたロボットをニアに差し出す
「僕の小遣いじゃ足りなくて買えない………」
なんだか涙が溢れてきた
メロはしきりに袖で涙を拭う
拭っても拭ってもポロポロと流れてくる
「何故メロが泣くんですか?」
「知らないよ 勝手に出てくるんだ 悔しいっ なんかいろいろ悔しいんだってっ」
「まさかロボットが買えなくて泣いているんじゃないですよね」
「んな訳ないじゃん ばか」
もう一度大きな仕草でゴシゴシと涙を拭き取る
ニアはゆるゆるとメロの血の付いた袖を掴み 歩きだすようにメロを促す
「部屋に戻りましょう 傷を手当しないとキレイな顔が台無しです」
「気持ち悪いこと言うな」
「今日もボールを顔面にあてたみたいですけど大丈夫ですか?」
「ふん  平気だよあのくらい」
「わたしはロボットよりメロの顔が崩れる方が心配です」
そう言ってニアはクスクス笑う
「はあ?何言ってんの?お前意味わかんない ニア絶対おかしい」
「おかしいのは直りました もう大丈夫です」
「嘘つけ もうついて来んなよな」



   メロは思う

   ひとつ前の世界に戻れたら 君をこわがらせるものや 君が不安に感じるものを
   すべて取り除いてあげられるのに………

   僕は君の手をしっかりと繋いで離れないように そうすれば
   そこから今この瞬間までなにも恐れるものはないはず

   そしてこの先の ずっとずっと先まで 僕は君が泣かずに過ごせるように 
   ずっと君を見守っていくよ


       ひとつ前の未来から この先も続く果てしない未来まで ずっと







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